2013年08月18日

ポール・サイモンの「ボーイ・イン・ザ・バブル」



ポール・サイモンの「ボーイ・イン・ザ・バブル」は『グレイスランド』(1986年)の収録曲である。
(paul simon,the boy in the bubble,graceland)
しかも2枚組の「1枚目の1曲目」に配置しているのだから、彼にとってかなり思い入れのある曲のはず。

この曲がある実話をヒントにしていることは、日本ではあまり知られていないようだ。
『DNA医学の最先端』という本に書いてあったので日本語でぐぐってみたがヒットしない。

アメリカにデビッド・フェッター(David Vetter)という少年がいた。
彼は先天性の免疫異常で、要するに免疫力がまったくないので、あらゆる感染症になる。
約10万人に1人の割合で起こる病気らしい。
親は完全無菌室を用意した。食べ物や服はぜんぶ滅菌。教育は家庭教師。

bubbleboy01.jpg

とても可哀想な話ではあるが、大富豪である親から生命が維持できる環境を与えられた彼は不幸中の幸いであって、この病気の子供の場合、普通はすぐ死ぬのである。

デビットは、この特異な生活が話題となり、「バブルの中の少年」と呼ばれ、アメリカで有名人になる。

やがて年月が過ぎ、彼を哀れに思った親は、彼を無菌室から出す計画を立てる。
空気のキレイなオレゴン州の高地に山を買い、家を建て、医者や関係者以外は立ち入り禁止にした。
さすが大富豪。
こうしてようやくデビッドは無菌室の外の世界を初めて体験することができた。

しかし、その生活を楽しむことができたのはたった3日間だけだった。
4日目に重い感染症にかかり、結局、無菌室を出て一週間で彼は死んだ。

このニュースを聴いたポール・サイモンが大きな衝撃を受け、書いた曲が「ボーイ・イン・ザ・バブル」というわけだ。
とはいうものの、わけのわからん歌詞だった。


[参考文献、その他]
大野典也『DNA医学の最先端』(講談社現代新書,74-76頁)

この本ではデビッド・フェッターの名前は伏せてある。そして、「1960年代のアメリカで有名になった少年の悲劇」と書いているが、彼は1971年生まれ1984年死亡であるから、正しくは「1970年代の〜」である。

ジョン・トラボルタのプラスチックの中の青春

私は未観賞。1976年のテレビ映画で、デビッドをモデルにしている。それにしても、彼が実際に死ぬ前に、彼が死ぬ話を作るというのは倫理的にいかがなものか。しかも、死に方は似ている。自分から希望して外に出るのである。
posted by 管理人mk at 11:48 | Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする




この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:



×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。